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劇団コケコッコー新作『あっかんべー』劇場レポート!

お笑いコンビ・令和喜多みな実の野村尚平が率いる劇団コケコッコーによる新作舞台『あっかんべー』の公演が、10月9日(金)に大阪のCOOL JAPAN PARK OSAKAで幕を開けました。映画館が輝いていた昭和の時代を描きながら、コロナ禍の現代を映し出す“ひねり”の効いたストーリーに、観客は大喝采。3日間の公演は、10月11日(日)に最終日を迎えました。

あなたにとって人生とは?

物語の舞台は、大阪の片隅にある映画館「日宝キネマ座」。静かなロビーで、1人の老人が取材を受けています。

「あなたにとって人生とは?」

最後に記者からこう質問された老人は、かつて出会った女の子の言葉を思い出すのでした。

そして場面は令和2年の夏、新型コロナウイルス感染症のあおりを受けて閉館の憂き目にあった「日宝キネマ座」に、関係者たちが1人、また1人と訪ねてきます。そんな中、ロビーにいた青年が突然気を失い、時代は昭和へ……。

館長夫婦やアルバイトの大学生、古本屋の文学青年など、さまざまな人々が行き交い、生き生きとした輝きを放つ「日宝キネマ座」。そして、大きな夢を抱えた少女たちが恐る恐るとした足取りながらも目を輝かせ、この映画館に足を踏み入れたところから、物語は大きく動いてゆくのでした。

YouTube配信の舞台化

劇団コケコッコーは吉本芸人のみで構成される劇団で、2019年に「関西の街を演劇を通してもっと元気に! 関西から出てくる演劇の才能を日本全国に発信!」をテーマに初めて開催された『関西演劇祭』で4部門受賞(最優秀脚本賞、最優秀演出賞、アクター賞、観客賞)するなど高評価を得ました。

今年3月には、受賞作を引っ提げて東京公演を行う予定でしたが、新型コロナの影響で中止に……。代わりに企画されたのが、今回のイベントです。

『あっかんべー』は、大阪の片隅にある映画館をめぐる人情喜劇ドラマで、もともと野村が9月からYouTubeで配信している“連続ラジオドラマ”を舞台化したもの。

今回の公演には、野村をはじめとした劇団メンバーに加え、野村有志(オパンポン創造社)、藤井颯太郎(幻灯劇場)といった『関西演劇祭』で好評を博した俳優陣が出演。「お笑い」×「演劇」の強みを最大限に生かした舞台を繰り広げました。

ラニーノーズ・洲崎の“愁いの表情”

他人には分からない悩みや苦しみを抱えながら、どうにもならない日常を時に笑い、時にもがきながら懸命に生きる人々を軽妙に描いた本作。ふだんはお笑いの舞台に立っている劇団コケコッコーの団員たちは時折、その真骨頂を覗かせながら、それぞれの役を熱演します。

なかでも映画俳優を演じたラニーノーズ・洲崎貴郁の、芸人ステージとは180度異なる愁いを帯びた表情は印象的。快活な女の子を演じた爛々・萌々とのやり取りでも、胸がキュンとするセリフで魅了しました。一方、小劇場で活躍する俳優たちは、そんな彼らをアシストしつつも絶妙な間やテンポで笑いを誘います。

夢と現実の狭間で揺れ動きながら、一度きりの人生を生きる登場人物たち。その群像劇は一編の映画のようでもあります。

「劇団コケコッコーが掲げている『笑って泣ける人情喜劇』をモットーに、今作『あっかんべー』が皆さまの日常に寄り添えましたら幸いです。劇団一同、劇場でお会い出来ることを楽しみにしております」

今回の公演に向けて、開幕前にこうコメントを寄せていた座長の野村。カーテンコールでは「冒頭で中谷(祐太)くんが台詞を間違えなければ完璧だった」と苦笑いしつつ、観客からの温かい拍手に安心したような表情を浮かべました。

公演では、ホール入場時の検温と手指の消毒、大阪コロナ追跡システムの導入をはじめ、ソーシャルディスタンスを保った配席や退場時の規制、観客・スタッフなど全員のマスク着用など、新型コロナウイルスの感染拡大予防対策も万全に施し、10月11日(日)の千秋楽まで駆け抜けました。


【ラフ&ピース ニュースマガジンより抜粋】※ラフ&ピース ニュースマガジンはコチラ